今日は、”自閉症の僕が跳びはねる理由”という本をご紹介します。
いま無名の日本人の若者が書いた1冊の本が世界20カ国以上で翻訳され、ベストセラーになっているのをご存知ですか? タイトルは「The Reason I Jump」(日本題:「自閉症の僕が跳びはねる理由」)。著者は、当時13歳の東田直樹さん。日本で7年前に出版された、自閉症である自分の心の内を綴ったエッセイです。
東田さんは千葉県出身で、会話のできない重度の自閉症。ところが、パソコンや文字盤ポインティングにより、援助なしでコミュニケーションが可能。小学校5年生までは授業中に母に付き添われ、普通学級に在籍。小学校6年生から中学3年生までは、養護学校で学び、その後、2011年3月アットマーク国際高等学校(通信制)卒業。
この”自閉症の僕が跳びはねる理由”という本は、自閉症者自らが語る極めて画期的な作品ですが、出版された当初は、ほとんど話題になることはありませんでした。それがなぜ突然、7年も経って、遠くイギリスやアメリカでベストセラーとなったのか。
この本を英訳したのは、アイルランド在住の作家デイヴィッド・ミッチェル氏。彼にも自閉症の息子がいます。日本語教師の経験があるミッチェル氏は、東田さんの本を読んで、まるで息子が自分に語りかけているように感じたと言います。息子はなぜ床に頭を打ちつけるのか、なぜ奇声を発するのか、息子とのコミュニケーションをあきらめていたミッチェル氏に希望の灯がともったのです。そしてミッチェル氏の訳した本は、自閉症の子供を持つ、世界中の多くの家族をも救うことになったのです。
ミッチェル氏はこの春に来日、東田さんと感動の対面を果たされました。これは、日本の自閉症の若者と外国人作家の出会いから生まれた希望の物語です。その一部を以下にご紹介します。
「僕たちは、自分の体さえ自分の思い通りにならなくて、じっとしていることも、言われた通りに動くこともできず、まるで不良品のロボットを運転しているようなものです。いつもみんなにしかられ、その上弁解もできないなんて、僕は世の中の全ての人に見捨てられたような気持ちでした。
僕たちを見かけだけで判断しないで下さい。どうして話せないのかは分かりませんが、僕たちは話さないのではなく、話せなくて困っているのです。自分の力だけではどうしようもないのです。自分が何のために生まれたのか、話せない僕はずっと考えていました。僕は筆談という方法から始めて、現在は、文字盤やパソコンによるコミュニケーション方法を使って、自分の思いを人に伝えられるようになりました。
自分の気持ちを相手に伝えられるということは、自分が人としてこの世界に存在していると自覚できることなのです。話せないということはどういうことなのかということを、自分に置き換えて考えて欲しいのです」
私はNHKのドキュメンタリーを見て初めて東田さんを知りましたが、普通の感覚ではとても常人の感覚を持っているようには見えない重度の自閉症ですが、普通以上の感受性と知性を秘めていることを彼自身の言葉から感じることができ、とても感動しました。
自閉症と診断されなくても、人の世界での「生きにくさ」を感じて生きる人の多くが、自分の気持はこんな風に言語化すればよかったんだ、という救いを与えられると思います。全ての自閉症児が東田さんと同じではないでしょうが、何者である前にすべての人が人間であることの重みを突き付けられた思いになりました。
自閉症の子供は、なぜ跳びはねるのか、なぜ床に頭を打ちつけるのか、なぜ奇声を発するのか、そのすべての行動に常人には解らない理由があるのだということを今まで知りませんでした。自閉症の人が独り遊びをしてるからと言って、人間が嫌いなわけではないし、出来ない事が多くても子供扱いされたくない、年齢相応に接して欲しい、そう願っていることを頭に叩き込まれた思いです。ぜひ皆さんもご一読ください。
今日の一言: 人間であることが素晴らしい
鶴田健次
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