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ラスベガス日本人教会  砂漠の地ラスベガスから乾いた心に命の水を

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今日は‘励まし’ということを考えてみました。

私の高校時代の同級生、また柔道部で‘同じ釜の飯を食った’池田隆蔵君の著書の一つに‘心の杖’という本があります。突然の交通事故で頚部の脊髄を損傷し、首から下が完全に麻痺した彼は、教え子たちに励まされながら死に物狂いでリハビリに励み、再び子供たちの待つ教室に戻るのですが、この本は、その筆舌に尽くしがたい苦しみの中で子供たちの真実な愛に触れた著者の感動と感謝の思いを綴ったエッセイ集です。その中に‘世界一の卒業式’というエッセイがあります。ご紹介します。

世界一の卒業式
平成四年三月吉日、私のクラスの子ども達の卒業式の日だった。教え子達は、その卒業式の前日まで負傷した私を見舞いに病室へ来てくれた。彼らは口々に「あしたの卒業式、来てよね。車いすでもいいけんね。ね、先生。見に来てよね」と、まるで手を合わせんばかりに私に向かって言葉を浴びせかけた。

私はなんと返事したらいいのか、困り果てた。やっとの思いで、それでもまともには子ども達と目を合わせないようにしながら「うん・・・、うん」と、自分自身をなぐさめるような気持ちで返事をせずにはいられなかった。

たぶん子ども達は、私のその時の表情から「先生は来れないんだな!」とわかっていたにちがいない。それにもかかわらず、私が「うん、うん」と返事をすると、ただそれだけで心の底からの喜びをキラキラした瞳にあふれさせたのだった。

卒業式の当日、やはり私は病室にいた。心のなかは悔しさと、子ども達へのすまなさでいっぱいだった。その気持ちを少しでもまぎらすかのように、本当なら式場で私が一人ひとり声を出して読み上げるはずだった教え子達の氏名を、心の中でかみしめるように、ゆっくりとゆっくりと読み上げていた。そして、名前を呼ぶたびに「ありがとう、ごめんね」と付け加えながら。

そんな朝のひとときを過ごした後、私はいつものとおり午前中の機能回復訓練を受け、昼食をすまして病室の車いすの中からぼんやりと窓の外を見ていた。

窓とは反対側にある通路のほうが、おおぜいの人々のざわめきで騒がしくなったのは、そんな時だった。「何事かな?」と思ったが、まだ首をまわすことができなかった時だった。車いすごと、やっとの思いで後ろに体を向けた私の目に飛び込んできたのは、手に手に花束を持って、よそ行きの服を身にまとった私の教え子達だった。そして、どの子の手にも卒業証書の入った筒がしっかりと握りしめられていた。

「先生、来たよ。これ見せに来たよ」と言う子。「先生、花」と言って花束を差しだす子。みんなの後ろのほうで恥ずかしそうに私をにこにこしながら見つめている子、「先生、卒業しました。ありがとうございました」と、おませにしっかりとあいさつする子。

それは、どの子もみんな間違いなく私のクラスの子ども達だった。彼らは、卒業式が終わるとすぐに、私のところへやって来たのだ。その日、K診療所の特別な配慮で、私の午後からの機能回復訓練は中止となった。そしてそのリハビリ室を使って、私はクラスの子ども達と記念写真に写り、思い出を語り合って過ごした。

世の中にはいろいろな卒業式があると思う。そして、教え子を送り出していく実に多くの教師がいることだろう。しかし、負傷して病室にいる担任の教師のために、教え子たちが自分たちの卒業式を運んできたという話は聞いたことはない。

私は、その晩、世界中の人達にその日起きたことを言ってまわりたいような、そんな幸せな気持ちに包まれていた。そしてその夜だけは全身の痛みも間欠的に襲ってくる痙攣からくる苦痛も、その日の昼間に子ども達がもって来てくれた、あの楽しいひと時の幸せが忘れさせてくれた。

君たちのためになにもしてやれなかった担任から、今あらためて心からお礼を言います。

世界一の卒業式をありがとう。



このエッセイを読みながら、その時の感動的な光景が思い浮かんできます。しかし、この子ども達が与えた感動と励ましは、他でもなく池田君が教師として子ども達に与え続けてきたものなのだと思います。励まし励まされる担任教師と生徒達との絶対的信頼関係を証明する実に美しい話です。愛はと与えるもの。与えるところから出発する愛は、与える者にも受け取る者にも喜びと励ましを得させるのです。

今日の一言: 受けるよりは与えるほうが幸いである

平安
鶴田健次



2011.06.28 01:15 | 鶴田健次牧師より
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